12月23日に橋本直也先生(株式会社Kids Public代表取締役)をお迎えして、表題のイベントを開催しました。
小児科医を目指す若手医師・医学生に向けて、歩まれてきたキャリアや小児医療への思いをご講演いただき、その後、「”子どもが好き”で小児科医になっていいの?」をテーマに座談会を実施しました。

30名近くの方にお集まりいただき、大変盛り上がりました。
イベント後のアンケートでは、以下のようなお声をたくさんいただきました。
・小児科医にはなりたいが、医師としては子どもに出会えるのは何かあったあとだよな…という疑問を以前から持っていました。そうした疑問に素直になることこそ新しい道を開いていける鍵なのかな、と先生の話を聞いて考えました。また、人との出会いや縁の力も感じました。
・こどもの未来や健康を守るために、大切なこと、そして今課題になっていることを、先生からお聞きできたのが良かったと思います。
・問題意識を持って行動に移すことが大切だということを学ばせていただきました。

“子どもが好き”で小児科医になっていいの?

子どもが少なくなっているからこそ、大事に育てたい

小児科医を志したのは大学5年。臨床実習で小児科を回った際、その先何十年と生きる子どもたちに関わることのできる小児科は、未来につながる医療である――そんな感覚を持ったという橋本先生。研修医時代に診療にあたった患者さんから、数年後看護師になったと報告の手紙がきた経験も語られました。

「子どもの数が減る中で小児科医の必要性を不安視する声もわかります。ただ、子どもを守るために解決しなければならない社会的な課題は、まだまだたくさんあります。少なく生まれる子どもたちを大事に育てる――このチャレンジに、小児科医として向き合い、力を尽くすことができる今は、むしろチャンスだと思いませんか?」

やらない理由が見つからない!

子どもが好きで小児科医になっていいのか?という質問に対して、
「もちろんです。小児科医になったあとも、結局すべての原動力は“子どもが好き”という気持ちでした。どんなに疲れた日の外来でも、診察中に子どもがニコニコしてくれたら元気をもらえます。患者さんから元気をもらえる科は、なかなかないと思います。正直、『子どもが好きだから、病気の子どもをみることが辛い』という気持ちは考えたことがなかったですね。当時、唯一の不安は子どもが泣きじゃくった時にイラッとしないかぐらいでした(笑)。意義がある・必要性があると思えることには真っすぐ向き合おうと思ってキャリアを歩んできました。ただ向き合うことが本当に辛いとしたら、無理して小児科医をする必要はないと思いますよ。どんな職業にもいろいろな懸念はあると思いますが、私にとっては、どれも小児科医をやらない理由にはなりませんでした。」
とお答えいただきました。

(左)サンタクロースの格好をした橋本先生(右)院内に設置されたおりがみツリー
(左)サンタクロースの格好をした橋本先生
(右)院内に設置されたおりがみツリー

臨床経験を経て出会った課題

虐待の裏に隠れた社会的課題

救急外来を受診したある母子との出会いが大きな変化になったといいます。右大腿骨骨折をした3歳の女の子と、自分が殴ってしまったと気が動転しながら打ち明ける母。母子家庭で子どもには発達に問題がありました。疲れ切った様子の母親に対して、「なぜ殴ってしまったのかと責める気持ちにはなれず、医療の限界と社会的な解決策の必要性を感じました」という橋本先生。

このような状態になるまで病院で待っているしかない小児医療の限界を感じる中で、病院の外で解決しないといけない社会課題に出会い、公衆衛生大学院への進学とその後の起業家キャリアへつながっていきました。

臨床経験が活きた大学院生・起業家キャリア

病院にいる子どもたちにしか関わっていないことを実感し、病院受診前にある社会的な課題を解決するために東京大学の公衆衛生大学院へ進学されました。臨床を経験したからこそ、大学院での学びに納得感を感じることができ、『臨床の答え合わせ』になったと言います。そして、2015年に妊娠・出産・子育ての孤立を改善したいという想いを元に、株式会社Kids Publicを起業されました。

どこに住んでいても、どんな社会経済的状況にある人にも等しく届けたい。医療格差を解消することを目標に、産婦人科オンライン・小児科オンラインは、全国237の自治体や複数の企業へ導入を進め、すべてのユーザーが無料で利用できるサービスとして展開されています。

橋本先生の起業家マインド

「研究も選択肢には上がりましたが、正確さ・丁寧さ・慎重さが強く求められる分野だと感じました。そうした中で、『成功するかわからなくても、まずはチャレンジしてみよう』という自分のキャラクターを踏まえると、起業のほうが自分には向いているように映りました」
と話す橋本先生に、起業家としてどのような考え方をお持ちなのか伺いました。

「完全に私見ですが、起業家を大きく二つに分けると、『ビジネススキルに長けた人』と、『社会課題の解決のために起業を選んだ人』がいるのではないかと思っています。後者については、事業として成り立てば『最も持続可能性のある社会貢献の形』と表現する人もいますが、私自身も、持続可能性を持たせた社会貢献という考え方に強く共感しています。」

「10周年を迎えた今年、社員数も36名を超えました。仲間に恵まれていると、日々感じています。よく「ひと・もの・かねが大切な経営資源だ」と言われますが、どれも重要である一方で、何よりも大切なのは組織、すなわち人だと私は考えています。チームで集まると、一人ひとりがそれぞれ異なるインセンティブを持っています。「なぜこの人がここにいてくれているのか」を見誤らないことが重要ですね。社員全体にミッション・ビジョン
を伝え続け、コミュニケーションを取り続けることで、一人ひとりのインセンティブを見誤らないようにしていきたいと思っています。」

(学生)普段からコミュニケーションを積極的にとる中で、「何を刺激として求めているのか」「どうしたら士気が上がるのか」を見極めるために、そのヒト自身と向き合う重要さを学ぶお話でした。

小児科は未来を守る医療

小児科医としてのやりがいは、未来ある子どもたちの健康を守るため、全力を尽くすことにあると話されました。

そして最後に学生・若手医師へ向けてメッセージをいただきました。
「将来自分がおじいちゃんおばあちゃんになったとき、守ってくれるのは自分たちが守った子どもたちでしょう。そう思うと、小児医療は未来を作っているな、とよく実感します。『子どもが好き』を原動力に変えて、是非小児医療の進路を考えてほしいですね。」
「しっかり小児医療の臨床の場で医師だからこそできる経験を得つつ、病院の外の視点も常に持ち続けてください。」

患者さんの病気だけでなく、取り巻く社会に積極的に目を向けるという新鮮な視点を得る素敵なイベントになりました。
子どもや未来のために何ができるだろうという出発点に常に立ち返り、日々の診療へ向き合う重要性を学びました。

(学生)「患者さんや症状だけでなく、その子を取り巻く社会にも目を向けられるのも小児科医のやりがい」というのが新鮮な視点でした。子どもや未来のために何ができるのかを常に考えながら、日々の診療や学びを重ねていこうと思います。橋本先生ありがとうございました!

対話は、キャリアの主食。

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