10月9日に水谷亮先生(さいわいこどもクリニック在宅診療部)と本田真美先生(医療法人社団のびた理事長、株式会社琉球マインド代表取締役、あのねコドモくりにっく院長)のお二方をお迎えして、表題のイベントを開催しました。
小児科医を目指す若手医師・医学生に向けて、お二人の歩まれてきたキャリアや小児医療への思いをご講演いただき、その後、「”子どもが好き”で小児科医になっていいの?」をテーマに座談会を実施しました。

50名近くお集まりいただき、大変盛り上がりました。
イベント後のアンケートでは、以下のようなお声をたくさんいただきました。
・こどもが好きというだけで小児科医を考えていいのかという悩みをまさに抱いていたので、それに対して専門の先生の話を聞くことができて本当に良かったです。
・実際に小児科医として働いていらっしゃる先生方から、小児科医の良い面の押し売りではなく、実際の診療やキャリアのお話を伺うことができたことが良かった。
本イベントを開催するに至った経緯については、運営の2人の記事がアップされていますのでご覧ください。
どうして水谷亮先生は小児科医を選んだか?

子どもが好きが小児科キャリアの出発点
最初に小児科医の道を意識したのは、大学2年生。保育園実習で子どもとかかわった際に、「子どもが好き」を自覚するとともに小児科医を意識するようになったといいます。ポリクリ・初期研修医時代に様々な診療科をローテーションする中で、全身を診ることができる小児科の面白みに魅力を感じ、小児科医となりました。
入局後は小児腎臓班やNICUで小児医療に従事した水谷先生。退院後の成長を見届けたり、子どもたちからの手紙をもらったりする中で、退院支援に魅力を感じるようになりました。
「退院した後でも交流のある患者さんや家族との出会いにより、「退院」させてあげたいという気持ちを強くしました。ただ、退院だけを目標にする医療を押し付けることは自分のエゴ。退院後の生活を知り、しっかり在宅医療を学ぼうと思いました」
在宅医療を通じて想いを強くした「1人1人を診る気持ち」
小児在宅は定期的に往診をするだけではなく、24時間の電話対応、福祉や教育との連携、家族支援など全人的に患者さんを診る仕事だと語る水谷先生。在宅医療の需要は増えているといいます。

「病院では、『〇〇病の〇〇ちゃん』として関わっているように思います。けれど、一人の人間として『〇〇ちゃんは〇〇病を持っていて、◇◇をすることが大好きで…』などと病気はその子の一要素でしかないことを意識していくことが大事だと気づかされました」
と、患者さんを全人的に診ることの本質を語られました。
今後の在宅医療における目標をお伺いしました。
「患者さんたちの将来的な生活をより意識して、場づくりにも着手したいですね」

どうして本田真美先生は小児科医を選んだか?

イルカセラピーに魅了されて小児科医へ
小学5年生の時にNHKで初めて見た「自閉症の子のイルカセラピー」に衝撃を受けた本田先生。イルカセラピーに魅せられ、小児科医を目指しました。
初期研修は、大学だと小児科を2〜3月しか回れないことを憂い、国立小児病院へ。研修医時代にもイルカセラピーを学ぶためにフロリダのDolphin Research Centerへ留学をされ、イルカセラピーで学位取得もされました。
また、医師として働く傍ら、20代でご結婚・ご出産もされています。当直ができない生活へ変わっていく中で、様々なご縁もあり都立東部療育センター開院準備室へ。
「療育センターの入所判定を考える業務の中で、小児科医として、一人一人の成長発達や重症度を見極める役割を感じるようになりました」
医療には選択肢が必要。だからこそ多職種連携
「色々な子どもや家族がいて、困りごとは一人ひとり違うからこそ、医療には選択肢を用意しなくてはいけません。だからこそ多職種連携が必要だと思うのです」と語る本田先生。
ニコこどもクリニックでの院長経験を経て、2016年にみくりキッズくりにっくを開院されました。
その後は、3つの分院を開院、医療法人社団や訪問看護リハビリテーション、発達支援プログラムの設立を始め、子どもたちの選択肢を増やすべく様々な取り組みをされました。
「理事長としては職員ファーストで向き合っています。最終的な責任は持ちつつも、色々な権限やアクションを認めることで、スタッフのみんなが専門分野や得意を活かして働くことで、選択肢が増えていきました。来年のことも想像していませんが、その時その時のご縁やタイミングで動いてきましたし、今後も働くメンバーの”やりたい”は大事にし続けていきたいです」

“子どもが好き”で小児科医になっていいの?
先生方のキャリアに関するご講演の後に、小児科の進路を考える医学生・研修医世代の多くが抱くであろう不安として、本イベントタイトルにもある「”子どもが好き”で小児科医になっていいの?」をテーマに、水谷先生・本田先生と医学生による座談会を開催しました。
小児科医を目指すきっかけとして、「子どもが好き」という方は多いのではないでしょうか。しかし、だからこそ抱えている不安があるのではないか、と小児科医を目指す医学生・研修医を分析してみたところ、
・「子どもたちの辛い場面に遭遇したときに、”子ども好き”のわたしは向き合えるだろうか?」
・「少子化時代でも小児科医はニーズがあるのか?」
という2つの悩みに行きつきました。
それでは、それぞれの悩みに対する医学生の想いや水谷先生・本田先生のご意見をご紹介していきます。
子どもたちの辛い場面に遭遇したとき向き合えるか不安
子ども好きの医学生からは、
「患者さんや家族が辛い状況で、しっかり対応できるのだろうか?」
「辛い状況に自分のメンタルも崩れてしまうのでないだろうか?」
といった不安があがりました。
水谷先生は、
「子どもが好きだから小児科医を考えるという視点は、病気ではなく患者さんへ目を向けている証なので、いい感性だと思います」
「もちろん辛い場面にはたくさん出会うかもしれませんが、大人を診ていても同じように辛いことにも出会うでしょう。辛い場面において、すべて何とかしないといけないわけではなく、そばにいるなど、医者というよりも人として向き合えることが大切だと思います。私は今でも悲しかったら一緒に泣きます。」
と患者さんを診ることの本質を語られました。
本田先生は、
「研修医時代には、自分が看取った子どものお葬式に行くべきではないと言われ、ある意味冷静に育ったんだと思います」
「まだ実習に出る前だと不安が募るかもしれないけれど、診療にあたるうちにプロフェッショナルとしての側面に気づいていくかもしれません」
と医師として働くうちに変わっていくことだと話されました。
少子化時代に小児科医になることの不安
小児科志望の医学生から挙げられた、「少子化が進む中で、小児科医は求められるのか」という不安についてもお二方からご意見をいただきました。
本田先生は、
「ワクチンも増えて感染症も減ってきて、小児医療は変わりつつあるように思います」
「教育や福祉と連携する必要も出てきました」
「病気ではない人も診るのが小児科だから、人を診れる小児科医が求められています」
と小児科医に対するニーズの変化について回答されました。
水谷先生は、
「少子化=不要というわけではなく、発達障害、虐待、在宅医療など以前に比べて小児科医のかかわり方の幅は広がっていて、今後もニーズはあり続けると思います」
「儲かるかと言われたら、儲かるというレベルによるかもしれませんが、十分小児科勤務でもやっていけると思います」
と小児科医のQOLについても話されました。
“子どもが好き”を長所にかえて
今回は小児科医の水谷先生と本田先生をお呼びして、「”子どもが好き”で小児科医になっていいの?」というテーマについて考えを深めていきました。
お二方それぞれの現場のことや小児科医を目指す若手の不安についてお話しいただく中で、参加いただいた皆さんのキャリアの悩みが晴れていればと思います。
水谷先生、本田先生、ご講演くださり誠にありがとうございました。

次回Vol.2は、12月23日にZoom開催されます!
詳細はメドキャリのオープンチャット「メドカフェ」や公式X等で随時公開予定です。
ご参加をお待ちしております。
文章:ガチャ
産婦人科医になる大学病院研修医。子どもが好きだから「生まれる」を守りたいという理由で産婦人科医を目指しました。しかし、小児科医を目指す参加者の皆さん同様、「子どもが好き」だからこそ辛い場面に出くわしたとき自分は頑張り続けられるだろうかと不安も感じていました。今回のイベントを通じて、不安を長所にかえ、患者さんにしっかり目を向けていければと思いました。
