子どもが体調を崩したとき、多くの人が思い浮かべるのは「お医者さん」の顔かもしれません。しかし、外来のみならず、入院や長期的なフォローが必要な場合など、その他にも多くのプロフェッショナルが関わっています。
診察室の“外”で、いったいどんな人たちがどんな風に子供やご家族を支えているのか?
はじめに、こんな症例を見てみましょう。
脳性麻痺のA君、7歳。熱と息苦しさを訴え、母親に連れられ来院しました。主治医は診察の結果、誤嚥性肺炎と診断し、入院を決めます。
不安が募る中、病室で待っていてくれたのは看護師さん。体温測定や酸素の調整を行いながら、A君が安心できるよう、優しく声をかけてくれます。
その裏では、医師の指示を受けて薬剤師も動いています。普段飲んでいる薬が、A君にとって飲み込みにくくないのか、再度検討しているようです。
次第に容態がよくなってきたA君。リハビリが再開できるまで元気になりました。理学療法士・作業療法士と一緒に、筋力トレーニングや手を動かす練習をします。遊びながらできるので、A君も楽しそうです。
食事の練習では、言語聴覚士が登場。嚥下機能を評価・訓練してくれます。安心して飲み込めるようになると、ますます食事に意欲がでてきました。
時間があるときは、院内のプレイルームに行きます。保育士さんがたくさん遊んでくれて、これを楽しみに毎日のリハビリも頑張れているようです。
一方で、どこか不安な様子なのはお母さん。もうすぐ退院となりそうですが、また悪化しないか心配とこぼしています。そこで、一度、公認心理士によるカウンセリングを受けました。完全とはいわないものの、少しもやもやを整理できたようです。
自宅でのケアについては、医療ソーシャルワーカーを紹介されました。気づけば少し負担となっていた金銭面も、補助がでることを教えてもらいました。
そして、入院してから1か月。無事に退院の日を迎えることができました。
このお話には、全部で9つの職種が登場しています。
①医師
②看護師
③薬剤師
④理学療法士
⑤作業療法士
⑥言語聴覚士
⑦公認心理士
⑧医療ソーシャルワーカー
⑨病棟保育士
彼らの仕事内容をもう少し深堀してみましょう。
①医師
病院を訪れた子どもたちが、最初に接するのは医師です。小児期の病気を診断し、治療することを任務とするため、RSウイルスやロタウイルスといった子どもに特有の感染症から、先天性疾患に関する知識までまんべんなく備えています。また、子どもたちの年齢も0-15歳までと幅広く、主訴も様々です。個々人の成長・発達にも目を向けつつ、臓器別ではなく、心身全体を診ることになります。
診察では、子どもが自らの症状を的確に表現することが難しいという場面に多くあたります。その際は、子どもの表情や声のトーン、しぐさなど、わずかなサインを手がかりに、親御さんからの聞き取りも踏まえて診断を組み立てていきます。医師としての知識と技術に加え、子ども自身の不安に寄り添い、尊重しながら診療することが求められます。
また、小児科医の活躍の場は病院だけではありません。学校での集団検診や予防接種、乳幼児の健診、小児在宅医療など、地域に根ざした活動も多くあります。
②看護師
看護師は、医師の診療補助を担うと同時に、子どもにとって最も身近な支えとなる存在です。
皆さん、小児科に行ったとき、診察室から大きな泣き声を聞いたことはありませんか?特に、注射や点滴は痛いと知っているからか怖がられることが多く、中には診察室に入るだけで大暴れする子もいます。そんな子どもたちを落ち着かせるのが看護師の力です。
「あと少しだよ!」「よく頑張ったね!」などと優しく声をかけたり、時には背中をさすったりして、子どもの治療を支援します。このように、処置に向けた心の準備やサポートを行うことをプレパレーションといい、小児医療では特に重要です。
また、入院病棟では、朝のバイタル測定、服薬補助、新生児の沐浴や授乳に加え、24時間体制でのナースコールにも対応します。「寂しいから来てほしい」といったお願いにもいち早くかけつけ、子どもたちの心に寄り添います。
③薬剤師
薬剤師には、「小児薬物療法認定薬剤師」という資格があります。
これは、小児薬物療法研修会における研修を修了し、試験合格およびレポート提出を完了すると認定されます。取得後は、医薬品に関わる専門職として、医療チームの一員となって小児科領域の薬物治療に参画することができます。
小児の薬剤療法の大きな特徴として、薬を嫌がる子どもたちに対するアプローチが挙げられます。粉薬が苦手、大きな錠剤が飲み込みづらいなど、子ども特有の理由で服用を拒否する場合、ジュースやアイスに混ぜたり、オブラートに包んだりと服用しやすいような工夫が有効なことがあります。
ただし、そのような変更により、薬効が変わってしまっては意味がありません。医師と連携をし、「効果がでているか?」「副作用やアレルギーが強く発現していないか?」経過を注意深く観察していきます。
また、退院後も、自宅で適切な服薬ができるよう、子どもやご家族に対する指導が必要です。特に、乳幼児がいる家庭では、食べ物と間違えて飲み込んでしまうといった誤飲事故の危険性があります。そのため、子どもの手が届かない棚の中に収納するなど、管理状況についても一緒に考えていきます。
④理学療法士
子どもの発達は個人差がありますが、その中でも運動機能や身体能力に遅れがある場合、リハビリテーションを通じてそれらの向上に取り組むことがあります。理学療法士は、その中心となる職業で、機能評価から治療方針の設定、実際の治療まで長期的なサポートをします。
具体的には、関節可動域訓練、筋力増強訓練、ADL自立練習、神経外科や整形外科術後の運動療法、呼吸の援助などが挙げられます。特に、子どものリハビリでは「楽しい」と感じることが治療意欲に直結するため、おもちゃやレクリエーションを交えて、遊びながら治療に取り組めるような工夫が大切にされています。
また、リハビリは保護者が同席する場合もあり、子どもの発達に対して不安に感じないような対応が必要です。家庭や学校でもできるリハビリテーションのメニューを提案し、患者本人を中心として周囲の環境を巻き込んだ支援が行われます。
⑤作業療法士
日常生活動作のリハビリを担当する作業療法士ですが、小児分野では特に脳性麻痺と発達障害の患者さんに関わる機会が多いといわれています。食べる・座る・ボタンを留めるといった日常生活動作を訓練し、理学療法士同様、遊びを通じたトレーニング内容を考えます。
また、発達障害の子どもに対しては、感覚面や学習面でのサポートも大切です。例えば、好きな感覚のクッションをそばに置く、ヘッドフォンを導入する、色や形に配慮した勉強道具を使用するといったように、自分のペースで集中できるような環境を整えてあげます。
他にも、周りとの関わりが苦手な子どもには、コミュニケーションが楽しめるような活動を設定し、その中で役割を与えるといった対応をします。
⑥言語聴覚士
言語聴覚士は、患者さんの「言葉」「聞こえ」「嚥下」をサポートする専門職です。
言語発達遅滞や吃音など、「言葉」の理解や表現に難しさを感じる子どもに対しては、話す練習を行います。難聴の子どもに対しては、補聴器の扱い方を指導し、聞き取りや発音の訓練に取り組みます。
なお、これら「言葉」や「聞こえ」に障がいをもつ子どもに対して、早期に言語聴覚療法を導入するのは有効であるといわれています。
また、脳性麻痺や口唇口蓋裂をもつ子どもには、嚥下訓練を通じて、栄養状態の改善や合併症の誤嚥性肺炎を予防を図ります。
⑦公認心理士
その名の通り、心理面での健康をアセスメントするのが主な仕事です。これは、悩みを抱える子どもだけでなく、家族に対してのサポートも含み、カウンセリングを通じて彼らの心理状態を把握します。
また、支援内容は、子どもと外部の人間関係(例:学校でのいじめ被害)のみであると勘違いされがちですが、実は病院内で発生するものもあります。
子どもが医師(または他職種)に対して恐怖心を抱くという事例は少なくなく、そのままでは診療に影響が出てしまいます。そんな時は公認心理士が間に入り、円滑なコミュニケーションのサポートをしたり、時には医師の診察に立ち会って、子どもが悩みをため込まないような体制を整えます。
精神科への紹介には難色を示されても心理士となら…と考え直してくれるケース、反対に精神科の方から対応が困難であると判断されて心理士にお願いされるケースもあり、心理士がいかに信頼されているかが伺えます。精神科に紹介するとなると難色を示される場面でも、心理士となら…となるケースもあり、子どもとの信頼関係を築くことが重要になります。
⑧医療ソーシャルワーカー
医療従事者の仕事は、病院内で完結するわけではありません。特に退院後のケアにおいて活躍するのが、医療ソーシャルワーカーです。
2022年現在、日本には20,000人超の医療的ケア児がおり、小児在宅医療の重要性が高まっています。しかしながら、一緒に暮らすご家族の中には、自宅での生活に不安を抱え、自分たちがしたいと願う理想のケアができないことに悩んでいる方々もいらっしゃいます。
医療ソーシャルワーカーは、そのようなご家族の相談にのり、必要であれば関係機関への橋渡しを行います。利用時間や費用など、ご家族が気にしておられるポイントをもとに、福祉制度やサービスを紹介し、それらと安心した関係を築けるようサポートします。
もちろん、主治医のもとへの定期的な通院や入院に関する補助もするため、病院内外で幅広く働く専門職といえます。
⑨病棟保育士
これまで紹介した職種は、小児科以外でも存在しますが、病棟保育士は小児科特有といえるでしょう。
主に入院している子どもに対して、院内プレイルームでの保育に携わります。また、食事や排せつ、寝かしつけといった生活介助も行います。
一方で、通常の保育士と異なり、対応年齢が0-18歳と幅広く、また、関わりが長期間になる可能性があるという特徴があります。
必要に応じて個別に病室を訪問し、読み聞かせなどを行う場合もありますが、どこにせよ限られたスペースでも楽しめる遊びを考案しなければなりません。
身体的・精神的負担が大きい入院生活において、病棟保育所は子どもたちにとってのオアシスです。少しでも緊張が和らぐような、明るくて楽しい空間づくりが大切です。
このように、小児医療には多くの専門職が関わり、それぞれが子どもとそのご家族を多角的に支えています。
チームとしての連携があるからこそ、子どもたちは今日も、安心して健やかな一日を過ごせるのです。
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