「小児科キャリアをもっと知りたい!」という熱い思いを胸に、全国の小児科医にインタビューさせていただきます!
様々な現場で活躍される先生方の声を通して、小児科を志す私たちのこれからを考えるヒントにできればと思います。

今回インタビューさせていただくのは、
東京都立小児総合医療センターで勤務されている中村俊貴先生です。

長崎県の離島で研修をして以来、子どもの総合診療に力を注がれてきました。ほかにも、新たな分野の開拓や若手の育成など、エネルギーにあふれる先生の原動力を探ります。

これまでのご経歴について

Q. 小児科を目指したきっかけはありますか?

実は、最初は全く小児科に興味がなかったんです。元々、消化器内科医になりたくて初期研修を過ごしていたのですが、とても忙しい激務の中で「このまま内科を選んでいいのか?」「最もやりがいのある診療科に進みたい」と思うようになりました。研修先の長崎医療センターが小児科を3ヶ月必修にしていたこともあり、よりやりがいがあると感じた小児科に進むことに決めました。

Q.初期研修途中での方向転換だったんですね。その中で特に印象に残っている出会いはありますか?

初期研修中に離島の診療所で出会った無菌性髄膜炎の女の子です。頭痛や発熱で続いて苦しんでいたため、何か悪い病気ではと考え、ヘリコプターで本土に搬送することになりました。診断がついて無事に帰ってきたのですが、診療所までお礼を言いに来てくれたことがとても嬉しくて印象に残っています。あとは、NICUの赤ちゃんたちが強く頑張って生きている姿にも勇気づけられましたね。
進路選択に当たっては、先生方との出会いも大きかったです。長崎県の小児科指導医はとても熱心で患者想いの方が多かったので、この先生たちと一緒に働きたいと強く思いました。

長崎医療センターの初期研修では同期や指導医に恵まれました
長崎医療センターの初期研修では同期や指導医に恵まれました

Q.離島というのは長崎ならではの経験かと思いますが、その後の進路にどう影響しましたか?

奨学金の関係で専攻医1年目から離島に赴任し、そこで2年半勤務しました。外来診療、出産に関わること、乳児健診、予防接種といった小児科診療を幅広く行っていました。責任を大きく感じており、何かを目指すというよりは「こどもが一人も亡くなることがないように」という想いで守りの期間と位置付けていました。

それでもいろんな分野の患者さんを診させていただくというのは貴重な学びでした。また、発達障害の診療をする、小学校で講演する、市の特別支援教育の会議に出席するなど、一般的な若手小児科医では経験できない経験も多かったと思います。
これらの経験は今の小児病院での総合診療科という立場にも繋がっていると感じています。

Q.一般的な小児科医の進路とは少し異なる印象を受けるのですが、その後の進路においてずれを感じることはありませんでしたか?

最初に離島研修をしてから大学病院・市中病院と進んだので、普通とは逆の流れでしたが、結果としてはよかったと感じています。視野も広がりましたし、プライマリケアも自信をもって行えるようになりました。

一方で、2,3人の小児科医で4,000人の島の子どもたちを診るのは大変でした。“自分のレベル=島のレベル”となる緊張感があり、「本当に自分でいいのだろうか?」と葛藤していました。それでも、子どもたちを2年半もフォローアップできたことや疾患頻度といった疫学的な感覚を身につけられたことは大きな財産になったと思います。

離島勤務中は若手で小児科を担っていました
離島勤務中は若手で小児科を担っていました

Q. 離島での貴重な経験が、先生のベースとなっていらっしゃるんですね。現在は東京で働かれているということですが、決断に至った経緯を伺いたいです。

国内留学に行った人・行けなかった人など様々な医師と出会う中で、自由に選択できる時間が限られていることを痛感しました。長崎で小児科の一般的な部分は吸収できたと感じたこと、家族の都合などもあり、今だというタイミングで東京に来ました。

東京に来て感じるのは、圧倒的な症例数と医師の視座の高さです。これまで見たことが無い患者さんを数多く経験できています。また、同僚は皆、日本レベル・世界レベルのエビデンスを作ることを日々意識していますし、部長たちは各分野のトップランナーであるので学ぶことがたくさんあります。
また、院内に研究支援センターがあり、臨床研究に対する支援も豊富で日々充実しています。

現在のお仕事について

Q. 現在、ご尽力されている小児の総合診療について、魅力を一言で表すと?

そもそも離島で研修している頃から分け隔てなく診ていたので、“総合診療=小児科医の普通である”という感覚がありました。なので、サブスペシャリティを選ぶという道が見えづらかったのですが、だからこそ本当にやりたいことを見つけられたと思います。
例えば、私は小児の超音波と診断学に興味があるのですが、他にも予防医学・公衆衛生・救急集中治療といった分野で頑張っている同僚がいます。なので、自分の興味関心を自由に突き詰められることが総合診療科の魅力の1つだと思います。

東京都立小児総合医療センター総合診療科で楽しく働いています
東京都立小児総合医療センター総合診療科で楽しく働いています

Q. 小児の診断学というのはどういったものなのでしょうか?

まだあまり開拓されてない分野なのですが、子どもたちを誤診や診断エラーから守るという点で小児科医にとって非常に重要な内容であると考えています。現在はいろいろな先生方と協力して臨床や研究の道を拓いている途中です。いずれは、全国の小児科医が上手に診断をし、見逃しを減らして子どもたちとそのご家族を助けることができる世界になってほしいと思います。

Q. 成人の診断学とは何が異なるのでしょうか?

いいポイントですね。基本は成人の診断学と同じですが、大きく違う点としては疾患頻度というのがあります。子どもの病気の多くは風邪や胃腸炎など自然軽快する疾患ですが、その中で見逃してはいけない重症疾患をいかにして見つけるかというのが重要になります。そこが小児科医の腕の見せ所です。
また、症状がうまく話せない子どもたちからどう情報をとるか、保護者とどのようにコミュニケーションをとるか、というテクニックが必要とされるのも小児診療の特徴です。

小児診断戦略について話し合いました(日本小児救急医学会@東京)
小児診断戦略について話し合いました(日本小児救急医学会@東京)

Q. 小児の診察は難しい部分が多いとよく伺います。先生が何か気を付けられていることはありますか?

一番は子どもと対等に接することだと思います。どうしても親ばかりに話を聞いてしまう状況になりがちなのですが、可能な限り子どもとスキンシップを取ったり声掛けをするように意識しています。子どもを一人の人間として扱うことで、子どもだけでなく親御さんにとっても信頼できる小児科医になれると考えています。

Q. 小児科ならではの心がけがあるんですね。そういった診察を含めた一日のスケジュールはどのような感じですか?

私がやっている業務は、大きく分けて5つあります。

①慢性外来
不登校や発達遅滞、染色体異常があるお子さんなど多種多様な方々を診ています。

②救急外来
当院では、救急科と総合診療科が連携して救急外来を担当しています。週に1回は救急の現場で、主に若手医師の内科系疾患に関する指導を行っています。

③病棟
川崎病、気管支喘息、尿路感染症の治療、原因不明の症状の精査、医療的ケアの在宅導入の支援などを行っています。

④レジデント教育
30人弱のレジデントに対して、小児科医の診療の基本、保護者との接し方、医師のプロフェッショナリズム、症例報告や臨床研究の進め方などを教えています。

⑤臨床研究
10個以上の臨床研究や症例報告に関わっています。東京に来てから熱中しているものの一つで、新しいエビデンスを世界に発信し、患者さんのアウトカムを改善することは本当にやりがいがあると感じています。

こういった内容の中で、一日の流れとしては

8:30 カンファレンス
10:00 病棟業務
16:00 カンファレンス
17:00-22:00 残務・勉強会など

といった感じです。

臨床研究や学会発表も積極的に行っています(日本小児科学会@名古屋)
臨床研究や学会発表も積極的に行っています(日本小児科学会@名古屋)

Q. 多くの役割を抱えられていると思いますが、この激務の中でプライベートとの両立はどうされていますか?

私のバランスとしては、少し仕事寄りであると思います。22:00頃まで研究したりして平日は家にいないですし、休日も学会などで忙しくしていますが、空いている日は子どもと遊ぶ時間をとっています。

同僚もバランスをとっている人はかなり多いです。当院(東京都立小児総合医療センター)の総合診療科は勤務体系がしっかりとしており、男性もほとんど育休をとったり、女性も時短勤務を選んだりと自分に合った働き方を選択しています。

Q. QOLが担保されていると聞いて安心しました。
もう一つ、若手に対するアプローチをされているというのが当事者として気になりました。尽力される理由や伝えたいメッセージはありますか?

若手医師を指導するのはとてもやりがいを感じます。私自身も楽しいですし、教えることが一番の学びになっています。実際に、若手に対する教育を通じて自分自身も大きく成長できています。

医学生に伝えることがあるとすれば、目の前のことを全力で楽しんで、知識と体力を存分につけてほしいということですかね。私は大学時代、バドミントンに熱中して、そこで体力をつけることができました。私が今、取り組んでいる臨床や研究も体力や胆力がないとできないことだと気付きました。どんなことでもいいので学生時代に打ち込んでいると、仕事に直接関係なくても将来きっと役に立つと思います。

中村先生や小児科の未来について

⭐️「子供好き」で小児科医になっていいの?という問いを持つ学生へのメッセージをお願いします!

結論から言うと、「子どもが好きだけでは足りない」と思います。
例えば、ラーメン好きの人は全員ラーメン屋さんにならないです。ラーメンが好きでかつ研究するのが好き、人に提供することが好きな人が向いていると思います。

小児科も同じで、好きという気持ちだけでなく、子どもの医療や育児、出産などに詳しくなり、患者さんの生活をもっと良くしたいという熱意が重要だと思います。
小児科の特徴や働き方にフィットして、やりがいを重視する方には是非小児科をおすすめします。

Q. 子どもに関わるあらゆることに熱くなれることが大事なんですね。フィットという話がありましたが、それはいつ頃分かるものなのでしょうか?

初期研修医で各科を回るのもいい経験になると思います。私の場合、学生時代のクリクラで選んだ診療科が小児科、産婦人科、内科でした。そのときに診療科の雰囲気を感じたり、先輩方に話を聞いたりして向き不向きを考えるきっかけになりました。
実習中は勉強だけでなく、自分のライフスタイルと合うのかもある程度見ておくべきだと思います。
やはり、周りで入局した科を辞めた人は、自分の性格や体力、ライフスタイルが合わなかった人が多かったです。診療科の特性を分析して、自分の向き不向きを見極めていってください。

⭐️最後に、医師として人生をかけて作りたいものを教えてください。

去年、医師11年目を迎え、これからの10年間の目標を立てました。主に
小児超音波
②小児診断学
③医学教育
④離島支援
の4つの柱に分けたのですが、特に①②は臨床面でもアカデミックな面でも日本をリードしていける小児科医になりたいと考えています。
個人的に目標を立てるときには、5年後、10年後の未来を想像するのは難しいと感じています。自分にも家族にも何が起こるか分からないからです。そのため、最近は1、2年後の短期目標を具体的に立てるようにしています。

最後に、小児科は自分たちの努力やチームワークが子どもたちや家族の笑顔に繋がる素敵な診療科です。幅広い分野の勉強は大変ですが、学べば学ぶほど奥が深く楽しいですし、診断領域も含め未開拓なことがたくさんありチャンスがあります。学生の皆さんが小児科に来られることを心からお待ちしています。
また、小児総合診療科に興味を持たれた方がいらっしゃれば、ぜひ当院に見学にお越しください。


編集後記

常にご自分の役割を冷静に分析されつつも、情熱を持って道を切り拓いていかれるお姿に心を動かされました。
小児の診断学という新たな領域に挑戦される姿勢や、その背景にある思いを伺い、小児科が次の一歩を後押ししてくれるフィールドなのだと改めて実感することができました。
中村俊貴先生ありがとうございました!

対話は、キャリアの主食。

記事の先に、話せる先輩がいます。姉妹コミュニティ「メドキャリ」の1on1へ。

メドキャリで先輩と話してみる →