お米
地方国公立医学部5年。
学校では比較的真面目なキャラで授業・実習に取り組んでいる。
毎年夏に行われる厚生労働省の医系技官職業体験に、去年参加してきました。「医系技官」というキャリアの雰囲気を知ることで、医系技官の仕事の面白みに魅了されました。同時に、臨床医の仕事への関心も強まる体験にもなりました。
この記事には、厚生労働省の職業体験の概要や参加した感想、この職業体験をオススメしたい理由を書いています。
*記事全体を通してこちらの資料も参考にしています。医系技官についてわかりやすくまとめられているのでぜひご覧ください。
「令和5年度 厚生労働省 医系技官について」https://phcd.jp/02/j_seminar/pdf/JN_PHCC_2023_file02.pdf
医系技官とは
厚労省のホームページによると、医系技官とは「医師免許・歯科医師免許を持ち、専門知識を活かしてより多くの人々の健康を守るための仕組みを築く技術系行政官」とされます。
つまり、医師としての専門性を行政の場に持ち込み、医療現場と行政を橋渡しする役割です。活動場所は、環境省や文部科学省などの他省庁、WHOなどの国際機関、在外公館、地方自治体などが挙げられます。
「夏の職業体験」とは
参加した職業体験の正式名称は「厚生労働省 夏の職業体験」で、同時期に行われる「インターンシップ」とは異なります。
「夏の職業体験」は7~8月の間に1週間、医系技官が所属する部署に配属されるイベントで、大学を通さず個人で応募できます。期間が短く比較的参加しやすいこともあり、私はこちらに参加しました。
一方、「インターンシップ」の期間は2週間です。管轄が医系技官の取りまとめではなく厚生労働省全体であるため、医系技官のいない部局でも幅広く申し込めます。また、こちらは大学を通した応募形式のため大学生・大学院生向けであり、医師の方で厚労省インターンをご希望であれば上の「夏の職業体験」に応募する必要があります。
参考:厚生労働省 イベント・説明会紹介ページ
キッカケは?
医学部に入学した時点で医師として働くことを求められることに、以前からなんとなく窮屈さを感じていました。臨床医として働くことが嫌なわけではないのですが、他にも選択肢はないか探す中で、医系技官という働き方を知りました。
大学から「厚生労働省 夏の職業体験」の案内メールが届いた際に、医学科4年生という比較的時間のある時期に、今のうちにできることをやっておきたいという気持ちにも後押しされ、応募することにしました。
気になる実習内容
守秘義務の都合で業務の詳細は語れません。しかし、一般にウェブサイトで公開されている情報から学んだことも多かったので、簡単にご紹介します。
「医系技官 夏の職業体験」の受け入れをしている部署には以下のものがあります。

https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/saiyou/ikei/event/index.html
例えば「大臣官房厚生科学課災害等危機管理対策室」であれば厚生労働省内の災害時の医療や健康の危機管理をしていたり、
「医政局地域医療計画課医療安全推進・医務指導室」であれば医療事故を防ぎ、安全な医療を提供するための政策を作っていたりと、
簡単には内容を想像できない専門的な内容を扱っているように感じました。
次のリンクから、他の部署についても職場体験受け入れ課室の概要を見ることができます。(令和7年度版)https://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/saiyou/ikei/dl/r7_syokubakeiken.pdf
上の部局のうち、「医政局医事課」という部署に配属されました。
医政局医事課は、医師の働き方や医師偏在などを扱う部署です。地域枠や臨床研修、専門研修にも関わっており、医学生や初期研修医を対象に議論を進める場面が多くあります。卒業後の進路や診療科を考える一人の医学生として、より強い興味が沸き、インターン応募段階でこちらへの配属を希望しました。
本部署では、インターンの課題テーマとして、主にシーリング制度の検討を行いました。
各都道府県・各診療科の医師採用数等を用いて必要医師数(下図参照)を求めるといった、エクセルでの分析が主な業務でした。(写真は2020年のものであり、最新の内容でないことにご注意ください)

エクセルを扱うのが苦手ではないためこの作業は楽しく、成果物を提出する際にはやりがいを感じました。
また、最終日には学んだことをほかのインターン生と共有し合う時間がありました。ほかの部署では庁舎内外で省庁外との会議に参加したというお話もあり、職場体験の内容は各部署により様々でした。
医系技官の特色
たった1週間の体験ではありましたが、その中で見えてきた医系技官のリアルな働き方を僕の目線でご紹介します!
魅力的な点
①制度を新しく作ることができる
医系技官を考える上で、最も重要な特徴だと思います。現場の力では解決しきれない医療の課題を、制度の観点から解決に導けます。例えば専門医の地域偏在という課題に対し、医師不足地域の臨床医が自分の病院に専門医を誘致するのには限界がありますが、シーリング制度という別の方法によって、別の角度から偏在是正に働きかけることができます。
(参考:https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/001277155.pdf)
②当直がなく、生活リズムが安定している
令和2年の統計によると、約6割の医師は当直を行なっているそうです。(医師は基本的に当直をすると思い込んでいたため当直をする医師の割合は想像より少なかったのですが、)一方で、医系技官は当直が0回です。ただし、国会答弁の前など時期的な忙しさにより帰宅時刻は変動がありそうでした。
(参考:https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000677264.pdf)
留意点
①臨床現場から離れる
土日祝の保険診療、配属部署と利害関係にない、などの条件を満たせば臨床での兼業も可能ですが、患者さんを相手にする機会が減るのは確実です。
②地理的な制約
基本的に東京の霞ヶ関勤務で、地方で働く選択肢が少ないです。地方自治体での勤務を希望することもできますが、実際にどの程度希望が通るかはわかりません。
③臨床医に比べて給与が低い
医系技官の基本的な給与水準は、免許取得後3年目で約540万円、11年目で約750万円、15年目で約810万円が目安とされています(超過勤務手当や住居手当等を含まない)。
なお、厚生労働省の2021年の調査によると、病院勤務医の平均年収は、約1,468万だそうです(超過勤務手当や住居手当等を含む)。
参考:第23回医療経済実態調査 (医療機関等調査)報告(令和3年実施))
④デスクワーク中心
臨床医は病棟内を動くことも多い一方、医系技官は基本的にオフィス内のデスクワークで運動不足になりがちだとお聞きしました。
1週間を通しての感想
今回の職業体験を通じて、医系技官の仕事の魅力をより実感できましたが、直接患者さんと関わりたいと思っていることを再認識しました。
全国規模で医療制度を考えられることは非常に格好よくて魅力的です。
それだけでなく、個人的には今回いただいた業務を楽しむこともでき、大きなやりがいを感じられる職業だと思っています。
一方で、これまでは目の前の患者さんに臨床医として直接寄り添いたいと思って勉強してきたことで、少なくとも現時点では患者さんと直接関わる臨床現場に強い魅力を感じている、あるいは将来的な進路にかかわらずまずは現場を経験しておきたいと再認識しました。
ただ、医師免許取得後にどの道を選んでも、誰かの支えになる立派な仕事であると思っています。職業選択の際には、「どのような方法で人を支えることが自分にとってより魅力的であるか」などといった個人の価値観の問題が大きいと感じられた1週間でした。
補足:今の関心
話は医系技官から少し離れますが、1週間の経験から「何か自分にできる活動を頑張りたい」という思いも強まりました。
同世代のインターン参加者と夜ご飯をともにしながら、それぞれの努力や関心を聞く機会がありました。難関資格に挑戦する人、学生団体で活躍している人など、自分の大学では出会えないような刺激的な存在ばかりでした。
しかし、その時の自分にはアピールできるものはこれと言ってありませんでした。ただ、「CBTが近いから勉強を頑張りたい」のような、当たり障りのない返答で終わる自己紹介が少し悔しかったのです。
今の自分に何ができるのかということをもう一度考えてみました。
自分の関心は何か、得意なことは何かを考え直し、その一つがメドキャリであるという答えに至りました。誰かの相談に乗ったり話を聞いたりすることに喜びを感じる自分にとって、悩みを抱えた人が集まるこの場はちょうど良いと感じました。
この体験をおすすめしたい人
話を戻しますが、医系技官というもののイメージを持ちたい方にはこちらの職業体験がおすすめです!
1週間を通じて、医系技官がどのように制度づくりに関わっているのかを学ぶことができました。全国規模で自分たちにも関わる制度を作ったり、その過程で統計を扱った計算をしたりする面白さがありました。
また、おまけとして全国からの同世代との出会いが、今の自分に足りないものを気づかせてくれました。
医系技官の職場を、自分の目で実際に見てみないとわからないこともあると思います。
時間のある学生にはイチ押しのイベントです。ご興味のある方は、冒頭の資料や職業体験についてぜひ調べていただけると嬉しいです。
謝辞
この度は、医系技官の職業体験を受け入れてくださり、誠にありがとうございました。特に、お世話になりました医政局医事課の皆様には心より感謝申し上げます。
また、本記事の執筆にあたり、内容をご確認いただきました医事課および厚生科学課の皆様には、ご協力いただきましたこと、深く御礼申し上げます。
